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〇『オレの記念日』を観て
桜井さんの”生き方”が教えてくれたこと       大西美枝子
冤罪!こんな理不尽なことが、自分の人生 に起こると誰が想像できるでしょうか! 今回上映された『オレの記念日』は、布川 事件で虚偽の自白をさせられ殺人犯となり、29 年もの獄中生活を送った桜井昌司さんのド キュメントです。 この映画を観るまで、この事件について深く知らなかった私は衝撃を受けました。その過酷さもさることながら、桜井さんそのものが実に明るく、この理不尽をある意味受け入れ、自分の糧としました。「冤罪の経験が、幸福や人の善意を信じられるようになった」といいます。 1978 年に無期懲役が確定した時には、「自分で良かったと思って過ごすしかない。明るく、楽しく」「ボクの仕事は真実を語ることです。もう二度と自分を汚さないように」と。 1996年に仮釈放されますが、肩書は殺人犯 のままです。でもシャバは全て輝いているといいます。 その後出会い、妻となった恵子さんは、生きる自由を満喫していると思われた桜井さんの、冤罪の苦しさを近くで見ることになります。 「窓を開けて飛び出そうとしたら、俺をつかまえて」と、明るいだけの夫ではありませんでした。冤罪は人間をここまで破壊するのです。 二人は無罪を勝ち取るために再審を訴え続けます。 2011年5月、「再審無罪」。汚名から44年。 やっと!「裁判官は頭のいい常識のないバカ。 組織の論理に流されてしまう。常識に従ってほしい。常識をもった裁判官だったら 50 年近くも闘うことなかった」、「検察官は自分の都合のいい証拠しか出さない」。 2021 年、布川事件国家賠償判決完全勝訴。 これで終わらない、“オレの記念日”はまだ続きます。 監督は言います。「冤罪だけでなく、皆いろいろなものを抱えているが、彼の生き方、突破する言葉の力が桜井さんにはあり、何故か元気が出る」と。 桜井さんの生き方、結果(冤罪界の大谷と 言われている)は、多くの人の道しるべになります。「冤罪は不運だったが、不幸ではない」。 失ったものはたくさんあるけど、得たものもたくさんあると。 理不尽ばかりを訴えるやり方もありますが、 理不尽を生き抜く人々の輝きを描きたいとの 監督の思いは、映画を観た私たちによく伝わ ってきました。私たちは、市民としての身の回りに起きる理不尽に鈍感であってはならない。 それをこのドキュメント映画は、教えてくれます。 何故ならそれは、明日は自分へ向けられる刃 かもしれないのだから。 はからずも9月26日、「袴田事件」の袴田巌さんに無罪判決が、58 年という途方もない時を経て出ました。再審に新しい風が吹いてきているのかもしれない! あぁ、桜井さん自作の歌、「キンモクセイ」の歌声が心に広がります。もう一度聴きたい。 (ご冥福をお祈りします。)
映画のラスト 千葉刑務所前の桜井さん
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