札幌映画サークルの『薄口映画ファン 田口雄三の “まったりシネマレビュー”』を公開しています

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『薄口映画ファン 田口雄三の “まったりシネマレビュー”』
【このコーナーでは、札幌映画サークルの会報“シネアスト”に掲載されている記事をピックアップして紹介しています。

今月は、好評連載中の『薄口映画ファン 田口雄三の “まったりシネマレビュー”』をご紹介します。】

* この記事は、札幌映画サークルの会報“シネアスト”2018年6月号(#539)から転載しました。

『薄口映画ファン 田口雄三の “まったりシネマレビュー”』
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第十七回
『レディ・プレイヤー1』

2018年 アメリカ 140分
監督:スティーブン・スピルバーグ
出演:タイ・シェリダン、オリビア・クック、ベン・メンデルスゾーン、他


1993年、夏。
安達祐美が着ぐるみ感満載の恐竜とかわいいダンスを踊るという、今考えたら、というか今考えなくても脱力必至の怪作『REX 恐竜物語』を観た2週間後に『ジュラシック・パーク』を観たときの衝撃は今も忘れはしない。

子供騙しにまんまと騙されて「れっくすぅー!」なんて安達祐美のマネをしていた当時7才の純粋なゆうぞう少年の目を、スピルバーグは「ゆうぞうよ、これが映画だ!」と覚ましてくれたのだ。
そしてその瞬間、ぼくの心に“スティーブン・スピルバーグ”(以下スピ)の名が深く刻み込まれたのだった。

しかし近年のスピ作品は非常に内省的な作風が強く、それはそれで見事な傑作を世に送り出し続けてくれてはいるものの“スピ=エンタメの王様”との思いを強く持つ人間には一抹の淋しさを感じざるを得なかったのも事実だ。
また、エンタメ路線で製作された最近の作品も今一歩突出したものが感じられなかったことがその思いに一層の拍車をかけていた。

だからこそ、今回スピが久々に“超面白いエンタメ大作”を世に送り出してくれたということが本当に嬉しかった。
いろいろと解釈の余地がある作品であることは事実だけれども、まずはスピに対して心の底から「ありがとう!」と言いたいのが正直な気持ちである。

何より嬉しかったのは、このところやや空回り気味だったスピ特有の“無邪気さ”溢れる演出が久々に良い方向に発揮されていたということだ。
スピ本人と作品と観客。その全てが三位一体となって楽しめる無邪気さこそがスピ映画特有の魅力だと常々思っていた自分にとって、本作はスピ本人も非常に楽しんで作ったのだろうと感じられる場面が随所に盛り込まれており、映像の新しさに反して、“昔のスピが戻ってきた!”という懐かしい気持ちで胸が一杯になった。
その意味で、新しさと懐かしさの同居する不思議な魅力を持った作品に仕上がっていたように感じる。
エンタメの王様・スピルバーグの面目躍如となる快作だ。


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奥さん  「ねぇ・・・なに、この映画」

田口   「『REX 恐竜物語』だよ。子どものころ母さんと一緒に観たんだよねぇ」

奥さん  「うわぁ・・・なんか色々きっついね(笑)」

田口   「まぁ、そう言わないでよ。あのころは楽しんで観てたんだからさ(笑)


たとえダメな映画であっても、時が経てば一周回って愛おしい。
“映画を愛する心”こそが、スピルバーグがくれた最高の贈り物なのかもしれない。
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