“日本映画名作祭2009”を開催します。 (ver.5) 【終了しました】
2009.09.03
【このコラムは、札幌映画サークルの旧HPから移行した文章です】
2009年11月5日(木)〜6日(金)の2日間、札幌市生涯学習総合センター“ちえりあ”1Fホールにおいて、恒例となっている“日本映画名作祭2009”を開催し、日本映画の名作を上映します。
(すべて35mmプリントで上映)
2009年は、“小津安二郎監督特集”として、次の4本を上映します。
☆ 『麦秋』 (1951)
☆ 『東京物語』 (1953)
☆ 『彼岸花』 (1958)
☆ 『秋刀魚の味』 (1962)
上映する各作品の紹介は、下記にけいさいしてある“日本映画名作祭2009 作品紹介・その1〜4”に掲載しています。
そして、札幌映画サークルでは、“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”の上映と共に、札幌在住の楢部一視(ならべかずし)さんによる“小津安二郎監督作品を語る 絢爛たる影絵”と題する講演会も併せて開催します。
(入場券半券をお持ちの方は無料で聴くことが出来ます)
平成21年度優秀映画鑑賞推進事業
“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”
『 麦 秋 』 / 『 東 京 物 語 』 / 『 彼 岸 花 』 / 『 秋 刀 魚 の 味 』
【会場】
札幌市生涯学習総合センター“ちえりあ”1Fホール
(札幌市西区宮の沢1条1丁目1-10)
【上映時間】 開場時間は上映開始の各15〜20分前
11月5日(木)
10:00〜12:05 「麦秋」
13:00〜15:16 「東京物語」
15:20〜16:20 “楢部一視さんの講演会”
16:40〜18:38 「彼岸花」
19:00〜20:53 「秋刀魚の味」
11月6日(金)
10:00〜11:53 「秋刀魚の味」
12:30〜14:28 「彼岸花」
14:30〜15:30 “楢部一視さんの講演会”
15:50〜17:55 「麦秋」
18:30〜20:46 「東京物語」
【楢部一視さんのプロフィル】
中学・高校・大学とも早稲田に学び、大学時代に雑誌『劇評』社に所属、三島由紀夫、戸板康二、津村英夫の各氏に学びました。1948年上野高校で発足した“映画之友友之会”の第1期生。以後、淀川長治氏を人生の師と仰ぐ。1955年松竹入社。京都・大船両撮影所でプロデューサー助手時代を経て、映画、テレビを通じ三浦綾子作品を多く担当しました。その縁で1978年から札幌在住。現在“アトリエ楢部”を主宰し、映画・演劇活動者の育成を支援しています。趣味は“文楽”。
『映画批評研究』津村会会員。札幌映画サークル会員。
昨年の講演に引き続き、本年も講師をお願いしました。
「彼岸花」では、製作助手として参加しました。
【鑑賞料金】
1作品・・・500円
(1作品ごとの完全入替制→続けてご覧になる場合も一度退席していただきます)
前売り券・当日券とも料金は同じですが、前売り券をお持ちの方の入場を優先とさせていただきます。
(お席は自由席です)
【主催】
日本映画名作祭上映実行委員会・札幌映画サークル・(財)札幌市生涯学習振興財団・文化庁・東京国立近代美術館フィルムセンター
“日本映画名作祭2009 作品紹介その1” 『麦秋』 (ver.2)
平成21年度優秀映画鑑賞推進事業
“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”
☆ 『 麦 秋 』 [1951年10月3日封切り]
1951年(昭和26年) / 松竹(大船) / 125分 / モノクロ / スタンダード
小津安二郎監督作品 / 脚本・小津安二郎、野田高梧 / 製作・山本武 / 撮影・厚田雄春 / 照明・高下逸男 / 録音・妹尾芳三郎 / 音楽・伊藤宣二 / 美術・浜田辰雄
出演・・・原節子、笠智衆、淡島千景、三宅邦子、菅井一郎、東山千栄子、杉村春子、二本柳寛、井川邦子、高橋豊子、高堂国典、宮口精二、佐野周二、他
* キネマ旬報1951年日本映画ベスト10第1位
* 1951年興行ベスト10第6位
* 1999年キネマ旬報選出オールタイム・ベスト10日本映画第21位
「ストーリーよりも輪廻とか無情を描きたいと思った」とは小津安二郎監督自身の言葉である。娘の結婚と、父母の郷里への隠栖でゆるやかに崩壊していく大家族、その別れの過程が小津監督独特の豊かなユーモアと厳密なスタイルで、あたかも自然のように描かれている点に特徴がある。
これは戦後に脚本家、野田高梧とのコンビを復活させ、以後遺作まで二人の共同作業を続けさせることとなった「晩春」(1949)の主題をより広く展開したものであり、個々の人物が多彩になったぶん、作品世界の陰影が豊かになっているといえるだろう。
笠智衆、三宅邦子、菅井一郎、東山千栄子らがはまり役ともいえる人物造型を見事に演じるとともに、杉村春子は息子の再婚相手に原節子を迎え狂喜する母親の姿を、絶妙な呼吸と身のこなしで表現してみせた。
「余白を残す芝居」を心掛けたという小津監督の演出の妙は、繰り返し見るごとに明らかとなるだろう。物静かな表面を支える作品の底が厚いのである。
【上映時間】 開場時間は上映開始の20分前
11月5日(木) 10:00〜12:05
11月6日(金) 15:50〜17:55
“日本映画名作祭2009 作品紹介その2” 『東京物語』 (ver.2)
平成21年度優秀映画鑑賞推進事業
“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”
☆ 『 東 京 物 語 』 [1953年11月3日封切り]
1953年(昭和28年) / 松竹(大船) / 136分 / モノクロ / スタンダード
小津安二郎監督作品 / 脚本・小津安二郎、野田高梧 / 製作・山本武 / 撮影・厚田雄春 / 照明・高下逸男 / 録音・妹尾芳三郎 / 音楽・斎藤高順 / 美術・浜田辰雄
出演・・・笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子、山村聰、三宅邦子、香川香子、東野英治郎、中村伸郎、十朱久雄、他
* キネマ旬報1953年日本映画ベスト10第2位
* 1953年興行ベスト10第8位
* 1999年キネマ旬報選出オールタイム・ベスト10日本映画第3位
この作品を作るにあたって、小津監督は「親と子の成長を通じて、日本の家族制度がどう崩壊するか描きたかった」と語っている。戦後から8年しか経ていない当時、まだ<高度経済成長>や<核家族>といった表現がなされていない頃の作品である。
尾道に住む老夫婦が、医者の長男や美容師の長女が住む東京に出かける。幸福そうな家庭も経済的に苦しそうである。東京で暮らす昔の同僚も親子関係に不満をもらす。子供たちが計画した熱海への旅行も疲れただけ、唯一の救いは次男の戦争未亡人との一時であった。帰郷の途中に立ち寄った三男の下宿で気分を悪くした母は、尾道へ帰って間もなく死んでしまった。駆けつけた子供たちがあわただしく帰った後、残された老父はしみじみと孤独を噛みしめるのだった。
4年後にロンドンの国立映画劇場で上映された各国の映画の中で年間ベストワンに選ばれ、世界の小津ブームのきっかけとなった。
【上映時間】 開場時間は上映開始の20分前
11月5日(木) 13:00〜15:16
11月6日(金) 18:30〜20:46
“日本映画名作祭2009 作品紹介その3” 『彼岸花』 (ver.2)
平成21年度優秀映画鑑賞推進事業
“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”
☆ 『 彼 岸 花 』 [1958年9月7日封切り]
1958年(昭和33年) / 松竹(大船) / 118分 / カラー / スタンダード
小津安二郎監督作品 / 原作・里見とん(弓へんに亨)、脚本・小津安二郎、野田高梧 / 製作・山内静雄 / 撮影・厚田雄春 / 照明・青松明 / 録音・妹尾芳三郎 / 音楽・斎藤高順 / 美術・浜田辰雄
出演・・・佐分利信、田中絹代、有馬稲子、桑野みゆき、久我美子、笠智衆、佐田啓二、高橋貞二、浪花千栄子、渡辺文雄、中村伸郎、山本富士子、他
* キネマ旬報1958年日本映画ベスト10第3位
* 1958年興行ベスト10第10位
娘が勝手に決めてきた結婚相手に腹を立てる頑固な父親の姿をユーモラスに描く、小津安二郎監督初めてのカラー作品。
小津監督の言によれば、父がなじみにしている京都の旅館の娘役として大映から招いた看板女優、山本富士子を活かした明るい映画にしたいという会社の方針もあって、色彩映画に手をつけたそうである。小道具や着物ひとつひとつに気を配り、赤が映えるアグファ・カラーをネガフィルムに用いて、色をはぶき、色があって色がないような、つまりは「色即是空。空即是色」の心持ちで撮影に臨んだと語っている。
ドラマチックな展開を極力排除し、さりげない会話のやりとりの中に人間のエゴを垣間みせるこの監督特有の手法が、あでやかな色彩とともに、見るものの心に染み込んでくる。
母親を演じた浪花千栄子と山本富士子による京都弁の掛け合いもまた愉しい。
里見?は小津監督の敬愛する小説家で、原作は小津監督の映画化を予定して書き下ろされたものである。
【上映時間】 開場時間は上映開始の20分前
11月5日(木) 16:40〜18:38
11月6日(金) 12:30〜14:28
“日本映画名作祭2009 作品紹介その4” 『秋刀魚の味』 (ver.2)
平成21年度優秀映画鑑賞推進事業
“日本映画名作祭2009 小津安二郎監督特集”
☆ 『 秋 刀 魚 の 味 』 [1962年11月18日封切り]
1962年(昭和37年) / 松竹(大船) / 113分 / カラー / スタンダード
小津安二郎監督作品 / 原作・野田高梧、脚本・小津安二郎 / 製作・山内静雄 / 撮影・厚田雄春 / 照明・石渡健蔵 / 録音・妹尾芳三郎 / 音楽・斎藤高順 / 美術・浜田辰雄
出演・・・岩下志麻、笠智衆、佐田啓二、岡田茉莉子、三上真一郎、中村伸郎、三宅邦子、加東大介、岸田今日子、東野英治郎、杉村春子、他
* キネマ旬報1962年日本映画ベスト10第8位
* 1999年キネマ旬報選出オールタイム・ベスト10日本映画第82位
この作品の構想を練っていた1962年2月、生涯独身であった小津は生活を共にしていた最愛の母を失った。その数日前、小津は映画人で初めての芸術院会員となり、喜びを分かち合ったばかりであった。
戦後、小津の復活を知らしめた「晩春」(1949、笠智衆・原節子主演)以来、初老の父と独身の娘の関係がこの作品でも踏襲されている。身の周りの世話を娘に頼り、娘の行く末を考えもせずにいた父が、旧制中学時代の恩師と中年の娘がしがないラーメン屋を営んでいる光景を目にし、人生の孤独を感じつつ娘を嫁がせるのだった。恩師の娘を演じた杉村春子は、演技指導の厳しかった小津ですら何も注文をつけなかったといわれているが、無言の立ち居振る舞いはこの作品のテーマを見事に表現している。
これまでになく人生の無残さを描いたこの作品の翌年、小津が端正な作風そのままに、還暦を迎えた12月12日、亡き母のもとへ旅立った。
【上映時間】 開場時間は上映開始の20分前
11月5日(木) 19:00〜20:53
11月6日(金) 10:00〜11:53